根管治療
歯科医院で、「歯の神経を取ります」「歯の根の中が膿んでいます」などと言われたことはありませんか?
歯の根の中には、神経が通っているとても細い管があります。虫歯が進んでしまい、虫歯菌が神経に到達したり、外部からの刺激によって根の中の細い管に感染が進んでしまった場合には、その管の中をきれいにお掃除して、感染物質を除去する必要があります。
そのような歯の根の治療を「根管治療」と呼びます。
根管治療はとても重要な治療です
たとえば、豪華な建物を建てるとき、基礎工事がしっかりしていなければ、せっかくの建物もいずれ倒壊してしまいますよね。
歯も同様で、適切な根管治療がされていない歯に高価なセラミックの歯を入れても、後々根の中に膿(感染物質)がたまってきたり、根のまわりに炎症が起こったりして、せっかく装着したセラミックを外して再治療が必要となる場合があります。
最悪の場合、歯を抜かなければならなくなるかもしれません。
そのような事態をさけるため、歯髄(歯の神経)を除去する際には、将来的に病変ができないように、また、すでに病変ができてしまっている歯であれば、その病変を治すために、丁寧に適切な根管治療を行う必要があります。
このように、根管治療は歯科治療の基礎となる重要なものです。
適切な根管治療はその歯の寿命を決定付ける、大切な治療なのです。
成功率を上げるためのポイント
マイクロスコープを使用した精密治療
歯の根管内は非常に暗くて狭く、かつ複雑に枝分かれした構成をしているため、従来までは歯科医師の勘と経験に頼った手探りの処置をするしかありませんでした。
しかしながら、このような従来の方法ではどうしても細菌や汚れを完全に取りきることができず、中で再び細菌が繁殖し、症状が再発してしまうことが多かったのも事実です。
当院では、最大21.3倍まで拡大できる歯科用マイクロスコープを使用し、しっかりと確認しながら根管のすみずみまでキレイに清掃しています。
歯科用CTによる精密診断
根管治療を行うにあたり、根の形や病巣の位置・広がりを把握することは非常に重要です。
CT画像では、従来のレントゲン画像ではわかりにくいこれらの情報も3次元的に把握することができるため、より確実に治療を行うことが可能となります。
また、レントゲンでは発見できないような小さな病変も発見することができるため、今までの検査ではわからなかった痛みの原因についても把握し、対処することが出来ます。
当院では、必要に応じて歯科用CTを活用し、精密な審査診断の上で治療を進めております。
ラバーダム
根管治療を成功させるのに最も重要なことは、細菌の感染を防ぐことです。
実は、唾液の中にはさまざまな細菌や目に見えない汚れが含まれており、根管治療中は常にその細菌が根管内に入っていくリスクにさらされているのが状態です。
そのリスクから歯を守るためには、ラバーダムと呼ばれる薄いゴムのシートをかぶせ、根管内に唾液が侵入しないように対策する必要があるのですが、日本では数%の歯科医院でしか使用されていないのが現状です。
ラバーダムの使用は、術者にとっても、患者さまにとっても、何かとストレスのかかる手技ではあるのですが、根管治療の成功のために必要不可欠なものと考え、ご協力いただいております。
ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)
ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)とは、柔軟性が高くさまざまな形状の根管に対して適切な処置を行うことができる治療器具です。
根管治療では、虫歯に侵された神経を除去するために「ファイル」と呼ばれる器具を使用しますが、このファイルには大きく分けて二種類あり、ひとつが「ステンレスファイル」、もうひとつが「ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)」というものです。
多くの歯科医院ではステンレスファイルのみを使用していますが、当院では十分な柔軟性を持ち、より神経を除去できるニッケルチタンファイルも同時に導入しています。
超音波洗浄
根管治療の成功率を上げるためには、根管内の汚れを完全に除去し、無菌化することが必要となります。
通常は、ファイルを使用して根管内の汚れを除去した後、薬剤を使用して根管内の無菌化を図りますが、当院では、薬液による化学的な洗浄に加え超音波スケーラーを使用した根管内洗浄も行っております。
超音波洗浄を行うことにより、根管内の汚れを効果的に除去でき、通常では届きにくい根の先の隅々まで洗浄液を届かせることができます。
MTAセメント
MTAセメントとは、1998年にアメリカで販売され、日本では2007年に販売を開始した歯科用セメントです。
殺菌効果が非常に高く、虫歯の不活性化をはじめ、神経の保護や根管の内部を埋める根管充填などさまざまな処置で応用が可能です。
特に、虫歯が進行して神経にまで達した場合には、むし歯が進行したところまでの組織を取り除きMTAセメントによって蓋をすることにより、従来では神経を抜いていた症状でも神経を保存出来る可能性が高まりました。
ただし全てのケースに適応されるわけではなく、MTAセメントを用いた場合でも状態によっては抜髄が必要となるケースもありますので、まずは神経を残せる可能性があるかどうか、ご相談いただければと思います。
歯根端切除術 ~根管治療が難しい場合~
歯根端切除術とは、歯茎の外側からメスを入れ、感染した根の先の部分を根こそぎ取り除く方法です。
根管の形が湾曲しているため根っこの先まで器具が届かず清掃できないような状態の場合や、嚢胞があまりにも大きいなど、根管治療が難しい場合に行う治療法です。
しかしながら、歯根端切除術は外科手術であるため、手術前にはCT撮影をし、位置や状態を十分に確認したうえで行う必要があります。
また、外側からのアプローチとはいえ、骨の中の非常に見えにくい部分を治療するため拡大鏡などを使用してでしっかりと確認しながら治療を進めることが必要です。
破折した歯でも、諦めません。
抜歯しなくてはいけない原因として意外と多いのが、「歯根破折」という歯の根っこが割れてしまったことによる抜歯です。
8020推進財団による「永久歯の抜歯原因調査報告書」によれば、永久歯を失う原因として、歯周病(41.8%)や虫歯(32.4%)に次いで3番目に多いのが、破折(11.4%)による抜歯だそうです。
歯根破折になる歯のほとんどは抜髄済の歯であることから、何度も治療を繰り返した上での抜歯であるケースが多いのでしょう。
破折した歯を放置してしまうと、その隙間から細菌が入り込んで炎症を起こし周辺の骨を溶かしてしまう危険性があるため、今までの歯科治療では、歯根破折が起こってしまった場合は抜歯しか選択肢がない状態でした。
しかし今では、条件が合えば、歯根破折の場合でも歯を残すことができる治療技術が開発されています。
ヘミセクション/トライセクション(分割抜歯)
分割抜歯(ヘミセクション/トライセクション)とは、歯の根が2本以上ある歯で、そのうち1本の根が損傷してしまったために抜歯が必要とされる場合に行われる治療法です。
この治療法は、問題(破折・むし歯)のある根と健康な値を切り離し、問題のある根だけを取り除き、健康な根を残すことを目的として行われます。
2本の根がある歯に対してこの治療を行う場合は「ヘミセクション」、3本の根がある歯に対して行う場合は「トライセクション」と呼ばれます。
ヘミセクションやトライセクションを行うことで、本来抜歯が必要とされた歯を残すことができる場合もあります。
しかしながら、すべての症例に適応できるわけではないこと、歯の根が一本なくなってしまうため、通常の歯と比べると弱くなってしまうという欠点もありますので、歯科医師とよく相談して治療方法を検討するようにしましょう。